【DTM初心者向け】ぺっぽこボーカルを浮かせないための誰でもできる11のアイデア

DTMで一番つまづきがちなのが自分のボーカルを入れる段であると思います。まず自分の声に馴染みがないので何をやっても納得が行かないし、私たちは歌唱のプロではないので上手に歌えていない気がしてやはり納得が行かずに挫折してしまうのです。

私は趣味でDTMを5年以上やっています。お金をかけずに休日を過ごすための趣味ですので高い機材は持っていないし、楽曲制作にあたってプロのような知識もありません。自己満足の世界です。歌唱力についても、DTMを始めてからカラオケでやや高い点数が出るようにはなったものの、当初はお世辞にも上手とは言えませんでした。今でも上手だとは思っていません。

高い機材がなくても趣味程度でDTMを行う程度であれば、アイデア次第で下手っぴなボーカルを何とかすることはできます。下手な私が何とかしてきたからです。本稿はボーカル処理に悩むDTM初心者に向けて、私がこれまで培ってきた誰でもすぐにできるアイデアを紹介していくものです。

歌うことは楽しいことです。挫折せずにDTMライフを送れる手助けになれれば幸いです。ちなみに私はMacに標準搭載されているGaragebandで曲を作っています。

 

ミックスのアイデア

1. コンプレッサ -ガッツリかけて構わない

コンプレッサは一般に「音を潰してガッツを出す」という役割を果たします。コンプレッサをボーカルに用いることによって、声の強弱における不安定さが是正され、楽曲の中で浮きにくく聞きやすく仕上げることができます。必須です。

コンプレッサをボーカルに用いる場合、特に初心者の場合は思いっ切り潰してしまって構わないと思います。レシオで言えば1/8〜1/16くらい思い切ってかけてしまっても大丈夫です。私は当初は本当にヘボかったので1/∞になるような感じでかけていました。常にコンプレッサがかかっていて雑音すらも増幅されるような状態です。コンプレッサというよりはもはやリミッターです。

まずは思い切りかけてみて、違和感があれば軽くしていけばいいと思います。コンプレッサをかけすぎるデメリットとしては抑揚がなくなることが挙げられますが、私たちは趣味でやっているのです。自分が納得できればそれでいいのです。

 

2. イコライザ -低音カット、高音を上げる

イコライザを調整することによって、ボーカルにとって不要なモコモコ音を消し、声の艶を出すことができます。これも必須です。曲の中でボーカルが浮いてしまう原因に「不要な音が混じっている+必要な音が足りない」ことが挙げられます。それをイコライザで調整しましょう。

イコライザは非常に奥が深いようで、プロの世界では各楽器ごとに細かい調整が行われるようですが、私たちはアマチュアなので必要最低限のことだけを覚えておけば良いでしょう。必要最低限のことには2つあります。

 
1. 100Hz以下はカット
ボーカルにとって100Hz以下の音は不必要なので思い切って削ります。ここを削ることによってモコモコ感が軽減されます。

 
2. 2kHz以上を3〜6db上げる
2kHz以上部分を上げることによって声に艶が出て、伸びやかな歌声になります。これは明らかに変わっていい感じになるので結構驚きます。人によっては8kHzの部分を上げたり、10dbくらい思い切って上げたりすることもあるので、いろいろと試してみるのもおもしろいでしょう。私は上記の通り「2kHz以上を3〜6db上げる」に落ち着いています。

 

3. ディレイ/リバーブ -秘技・人力立体ディレイ

ディレイやリバーブをかけることによって、やはり楽曲の中で浮きがちなボーカルを馴染ませる効果があります。これも効果覿面なので必須です。リバーブについてはかなり奥深く、私たち素人が太刀打ちできる領域ではないようなので、私はいつも適当にやっています。

 
ディレイについてはパラメータをいじるのも良いのですが、とっておきの秘策があります。トラックをコピーしてディレイトラックを作ってしまうのです。を下記、箇条書きで手順を記しておきます。

 
1. ボーカルトラックをコピーして同じものを3つ用意する(a,b,cとする)。aがボーカルトラック、b,cがディレイのためのトラックとなる。

2. bを8分音符分だけ後ろにずらして、パンを左に振る。

3. cを4分音符分だけ後ろにずらして、パンを右に振る。

4. b,cの音量を聴こえるか聴こえないかくらいまで下げる。完成。

 
これでボーカルのディレイが右と左からズレて聴こえる人力立体ディレイの完成です。簡単な割にかなりいい感じになるのでこれは必ずやります。『エンジニアが教えるミックス・テクニック99』を参考にしました。

 

4. ボーカルにディストーションをかける -倍音の増幅で声に映えを

ボーカルにディストーションをかけることによって、「コンプレッサによって潰される+倍音部分が増幅される」の相乗効果を得られます。Garagebandでは「Fuzz vocal」を選択してFuzzを高めにするか、「クランチギター」(「ディストーションギター」ではなく)の中の任意のエフェクトをかけることになります。

ディストーションをかけたトラックをメインにしてもいいし、あまりにもざらつきすぎて汚いと感じる場合には、トラックをコピーした上でディストーションをかけたトラックを聴こえるか聴こえないかくらいの音量で重ねてもいいでしょう。意外と使えます。

 

5. ピッチ補正 -テクノロジーによる免罪符

完璧に歌ったつもりでもどこか音が外れていてがっかりするものです。私もいまだに何度録り直しても上手く歌えないことがあって、「何て音痴なんだ」と嘆かわしくなることがあります。加えて、伸ばす音が不安定で知らない内に半音下がってしまっていたりもします。がっかり。

そんな時にはピッチ補正をかけてしまうのがお手軽です。Garagebandではピッチ補正機能が内蔵されているので、それを使っています。かつてwindowsでDTMをしていた頃は、audacityというDAWに「auto-tune」を入れていました。

 

6. リズムのズレはトラックの加工で何とかなる -リズムは重要

きちんとしたテンポで気持ちよく歌っているつもりでも、些細な箇所のリズムがズレてしまって気になる場合があります。リズムのズレは聴いているほうとしても顕著に気になるので、見つけ次第直していきたいところです。

わざわざ歌い直すのが面倒であれば、録音したトラックのズレている部分をカットして移動、無理矢理リズムに合わせてしまうことも可能です。これは私は本当によくやります。箇所にもよりますが、大体は何とかなります。何とかならない場合は仕方なく歌い直します。

 

歌入れのアイデア

7. 1オクターブ上でハモる -効果絶大

上で紹介してきたアイデアを試してみたけれど何か物足りない、ボーカルが浮いている感じがするという場合の秘策に「1オクターブ上の音程でハモる」があります。これは個人的に気に入っているテクニックで、殆どの場合これで何とかなるような気がしています。
 
・Aメロのボーカルが何か地味だ
・サビに艶が足りない気がする
・何かもう一つスパイスを加えたい
 
などの場合に大変に重宝します。やり方は読んで字のごとく、1オクターブ上で同じメロディーをなぞるだけです。場合によってはかなり高い音程になるので、裏声(ファルセット)で歌うことになるでしょう。

 
1オクターブ上ハモリのトラックのミックス処理は、私は下記のようにやっています。これはコーラスをミックスする際にも同じく使えます。

・コンプレッサで潰しまくる
・イコライザ700Hz以下全カット
・ディレイ/リバーブをかけまくる

 
かつてニューレイヴの旗手として話題になったUKバンドKLAXONS(クラクソンズ)はこれを好んで使っていて、殆どの曲のAメロではオクターブハモリが用いられています。以下、オクターブハモリが印象的に用いられている曲を3曲だけ挙げます。

▲KLAXONS – ECHOS(0:32〜)

 

▲ZEDD – Done With Love(0:33〜)

 

▲Awesome City Club – 今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる(1:09〜)※男女混声ボーカルでのオクターブハモリ

 
これらの曲のように大きな音量で綺麗にオクターブハモリをしなくても構いません。聴こえるか聴こえないかくらいの音量で添加してもボーカルを伸びやかに艶やかにすることができるので、裏声が苦手な人でも是非とも一度やってみて欲しいと思います。

 

8. セルフユニゾン -声を重厚に

同じメロディーを別トラックにて自分で重ねて歌うことによって、声に厚みと安定感が出ます。これも非常におすすめで、私はよくやります。AKBやジャニーズ、EXILEなどのアイドルユニットが大勢で同じメロディーを歌っているのと同じで、それを一人でやりましょうということです。

 

9. 腹式呼吸で歌う -元合唱部が教えるテクニック

歌い方についてですが、ボーカルが貧弱に聴こえて浮いてしまうことへの根本的な解決策は「喉を開いて」「腹式呼吸で」歌うことです。そうすることによって芯のある歌唱になり、様々なエフェクトも効果的にかかります。

とは言え、「腹式呼吸って何ぞ?」というところでしょう。私は高校時代に合唱部に所属していたのですが、その際に腹式呼吸の手応えを掴むために下記の方法がありました。

 
1. 仰向けで横になる

2. 脚を伸ばしたまま、かかとを宙に2〜3cm浮かせる(こうすることによって腹筋に自然と力が入る)

3. 「アー」と声を出してみる(自然と喉が開かれ、腹式呼吸で声が出る)

 
やってみると、太くて芯のある声が自然と出たのがわかると思います。これが最も簡単な腹式呼吸での声の出し方だと思います。その姿勢のままレコーディングをすることも可能ですが、やや疲れるので、コツを掴むためだけに行うのが良いと思います。

また、歌う際には意識して腹筋に力を入れてみましょう。また、腹筋に力を入れると高い声を出しやすくなるので、カラオケでも応用可能です。

 

10. 大きな声で堂々と歌う -自信に敵うものなし

自宅だとなかなか大きな声が出せないので、つい囁き声のように歌ってしまいがちなのですが、女性ボーカルの曲で意図的にウイスパーボイスで歌うのでない限り、聴き映えがよくないのが事実です。自信がないように聴こえてしまうのです。歌の巧拙は二の次で、まずは堂々と歌いましょう。

私は最近は自宅で昼間に歌録りをするようになりましたが、かつてはどうしても恥ずかしいし騒音でクレームが来たら嫌だなとも思って、パソコンとマイクを携えて誰もいないところにクルマを停めて録音をしていました。ちょっとした不審者です。また、出掛けるのが面倒くさいときには布団に潜って録っていました。布団の中がとても暑くなります。

自宅以外の手軽なところではカラオケで録るという手があるでしょう。

 

その他のアイデア

11. 楽器でボーカルラインをなぞる

ボーカルが下手に聴こえる原因は様々ですが、主に「声の大小が不安定・音程が不安定・リズムが不安定・声に芯がない」あたりに起因するように思います。これらを一気に解決する手段として「楽器でボーカルラインをなぞる」というのがあります。

楽器とボーカルが同じ旋律を奏でるので、仮にボーカルが下手っぴだとしてもそれを少しは打ち消す効果があるというわけです。これは私もよくやります。よく、というか、必ずやります。

▲MEW – The Zookeeper’s Boy(0:40〜)

デンマークのバンドMEW(ミュー)の曲です。この曲のAメロ部分ではボーカルの旋律と同じ音程をピアノがなぞっています。その上、オクターブハモリも用いられていて、ボーカルラインに厚みがもたらされていることがわかります。

ボーカルラインをなぞる楽器はピアノが定石で最も自然だと思います。私は他にオルガン、鉄琴、ギターでもやることがあります。これも楽器が聴こえるか聴こえないかくらいの音量で流しても効果があります。とても簡単なのでおすすめです。

 

おまけ:楽曲制作環境

ついでに私の楽曲制作環境も書いておきましょう。なるべくお金をかけない完全に自己満足の趣味でやっているので、必要最低限です。たったこれだけの環境でも音楽を作ることは可能です。

MacBook Pro

5年前くらいにMacBook Proを購入して以来、標準で付属しているDAWであるGaragebandで作っています。もちろんソフトは無料です。

Windows時代ではDAWにaudacity、波形編集ソフトにSoundEngine、MIDI打ち込みにDominoを用いていました。全てフリーソフトです。

 

ギター -友人にもらったもの

友人に「要らないからあげる」と10年以上前にもらったギターです。当初はMIDIでギターを打ち込んでいたのですが、ギターのあの独特な空気感はMIDIでは再現できないことに気付いて、最近では弾いて録音しています。

但し、一般的に言う「弾ける」というレベルではありません。Fのコードは押さえられますが、押さえられるだけで流れるような演奏はできません。録音ではコード毎に別録りし、上手に切り貼りして楽曲を完成させています。従って、自分の曲をライブ等で演奏することは無理です。でも、演奏することではなく曲を作ることが好きでやっているのでいいのです。

 

ベース -ハードオフで投げ売りされていたもの

ハードオフでジャンク品として2,000円で売られていたベースを持っていますが、これを使って録音したのは一度だけです。ギターは雰囲気でコードを鳴らしておけば何となく様になるのですが、反面ベースは難しい。音の粒が揃わないし、リズムも合わない。諦めました。

というわけで、ベースは全て打ち込みで行っています。

 

マイク -SHURE PGA58-XLR

DTMを始めた当初からずっと家電量販店で売っていた2,000円くらいのマイクを7年くらい使っていたのですが、最近「SHURE PGA58-XLR」というとても評判が良くコスパの高そうなマイクに買い替えました。人気商品です。結果、とても満足しています。なぜ今までこれを使わなかったんだ。

 

オーディオインターフェイス -TASCAM US-100

当初はPCのイヤホンジャックにマイクを差し込んで録音していたのですが、どうやらDTMにはオーディオインターフェイスというものがほぼ必須らしいと知って、買いました。この「TASCAM US-100」を購入したのは何となく評判が良さそうだったからです。特に不満なく7年間使い続けています。

 
参考文献:

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